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正面を更地に変えた光線が消え、少女が逃走を再開しようとした時、異変が起きた。
「か、身体に、力が……」
入らない―とすら言えずに、少女は地面に倒れた。指の一本、筋繊維すら動かない。身体中にまるで一週間は徹夜したような疲労が溜まっている。
ここで倒れる訳にはいかない…この杖を…皆の元へ……!
その時、壁を突き破り巨大な兵器が進行してきた。
三メートル程のサイズを持つそれは、下半身に無限軌道を装備し、人間でいう頭に値するパーツはなく、代わりに上半身が異常に飛び出していた。
『アッレ~~、そこの合羽どうしたのかな~?』
マイクを使って、不愉快なトーンと声が聞こえる。
少女を指差すように、兵器は右腕に値する二連の砲を向ける。
『どうやら、解放の杖を使ったようだな~、アレのフルパワー、普通じゃ干からびるらしいぜ~』
その発言が本当なら、先程の一撃もあの杖には大した事ではないのだろう。
兵器が徐々に少女に接近して来る。兵器の周囲には一般兵も僅かばかり見えた。
『さぁ~て、どう遊んでやろうかぁ?』
「あの女で的当てしようぜ!」
「少しずつ切り刻もうよ~」
「それより女なら……グフフ」
「!、お前天才だな!!」
どうやら捕虜ではなく、奴らの玩具として扱う気らしく、一般兵から下種な提案が上がる。
あくまで奴らからしたらテロリストの為、捕虜としての扱いなど期待していないが、複雑だった。
命があれば幾らでもやり直しが利くが、果たして奴らの『遊び』が終わった後に、その気持ちを保てるか?いや、そもそも遊び終わったら棄てられるのではないか?
『まぁ、とにかくまずはその合羽引っぺがせよ』
兵器から声がする。少女は抵抗しようと身体を動かしてみるが、力が全く入らない。
嫌だ、まだ何も成してない!何もせず、何も出来ず、こんな結末認めない!!…………!
少女の想いも虚しく、一般兵の手が合羽のチャックに触れ、下に下げようとされた時、
その一般兵の首が宙を舞った。その背後には少年がいた。
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