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首が地面に落下した時、生き残った三人の兵士が銃口を向ける。
『邪魔しやがってぇ~、撃ち殺せ!』
兵器からの不愉快なトーンと共に、銃口から弾丸が放たれる。
少年はバックステップで距離を取り、左手首の下から鎖を伸ばし、円形に回す。
すると鎖は一瞬で最高速に達し、死を齎す連撃のことごとくを弾き飛ばす。
「重力よ、我に跪け《gravity・kneel》!」
意味不明な事を口走り、足を曲げる事で力を蓄える。そして、限界まで溜めた時に、
「空を飛ばせろ《sky》!」
その力を解放し、兵士は疎か、巨躯の兵器すら見下ろせる高さまで移動し、更に上昇する。
『舐めんなよコラァ~!!』
真剣味が感じられないトーンで兵器が両腕から破滅の光をばらまく。が、光は狙いは粗く、避けるまでもなかった。
横に四階建ての屋上が見えた辺りで、更に口走る。それが最善だと、本能が告げている。
「地球の中心へ《earth》!」
するとさっきとは逆に、地面に急速落下する。落下先の兵士が迎撃の砲火を上げるが、鎖を振り回し弾く。
もはや止める術はない。地面と少年は激突し、真下の兵士は地面と少年の間にプレスされ、衝撃に耐え切れず二人も壁に激突した。
瞬時にえぐれた地面を蹴り飛ばし、一時的に宙に浮く。と、先程まで少年が居た地点に光が着弾した。衝撃までは避けきれずに、右側のレンガ造りの壁に叩き付けられる。
『舐めんなつったよなぁ~、怪物野郎!!!』
兵器が両の砲門を少年に向け、連射する。
間一髪少年は走り出し、破滅の光を回避する。右へ左へ動かしつつ、兵器の懐を目指す。あらゆる大型の存在共通の弱点は『死角の多さ』だ。
『ブァ~カ!質量の差に死ねぇ!』
その弱点を埋める最初の発想に『押し潰す』が上がる事も、無意識に浮かんでいた。
気持ち悪い程に身体は覚えている。頭は完全に忘れているのに……
少年は頭を振り、戦闘に集中する。次の手を打つ為に。
「万物を圧殺しろ《squeeze》!!」
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