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呟きの後、左側の裾から鎖を直線に向け放つ。目標は一つ、兵器の右側の砲門だ。
破滅の輝きを溜めているそこに鎖が侵入した。そうなると結末は一つだ。
『ハアァッ?!』
右側から爆炎を上げ、兵器は叫ぶ。本来の結末と違い、鎖は砲身を貫通し、尚も存在を主張するように煙を貫いた。
それを引き抜き、鎖を裾の中へと引き戻す。
途端に右側の砲身は光が暴発し、辺りに焼けた破片をばらまく。
『こぉの怪物がぁぁぁ!!!』
兵器は余裕をなくした声を上げ、辺り構わず左側の砲門から光をばらまく。
地面を焼き、壁をえぐる砲撃を少年は時には壁を蹴り、時には魔術で空中に浮かび回避する。
少年は隙を付き、鎖で兵器の突出した胴体を、無限軌道を、左側の砲身を削る。全て致命傷を狙ったものだが、兵器も体格に似合わぬ機動でそれだけは回避している。
だが、それにも限度がある。大型の兵器の運用はただでさえ多大な集中力を使う。その上、彼が現在搭乗している兵器は、そのような高機動戦用ではなく、対城戦用の試作機だ。
故に本来ならば、少年に死角である頭上を取られた事も含め、むしろ、今まで互角だった事を賞賛すべきだろう。
『認めねぇ、こんなオチぜってぇ認めねぇぇぇぇぇッ!』
兵器は叫び、無理矢理限界まで曲げた左側の砲門を少年に向ける。だが、所詮は無理矢理、決して少年には向けられない。
そのさまを少年は無視し、鎖を縦斬りの要領で振り降ろす。
兵器は本来、十二の魔術装甲が搭載されていたが、鎖はまるでバターを斬るかのように兵器を両断した。
兵器は一瞬、両断された姿を晒し、小爆発を繰り返す。
少年は、背後の杖と少女を見遣(みや)る。少女はいつの間にか目をつぶっていた。
その右手の杖を少年は引っ張る。が、少女は何処からそんな力が出るのか、決して杖を放さない。
杖が記憶に繋がる気がするが、これ以上ここに居るのは危険だ。
「《空を飛ばせろ》」
仕方なく少年は少女を抱き抱え、近くの屋根を経由して現場を後にした。
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