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意識がゆっくりと覚醒していく。
霞んだ視界、しかしそこには何も写るものは無い。
「俺が言っている事は理解出来ているはずだ、何故従わない?」
そんな声がぼんやりと聞こえた。
「素直に従えば、お前の意思を操る事も無い」
そうだ、こいつのせいでオレはやりたくも無い事をやらされているんだ。
「黙れ、どっちも同」
瞬間、視界に星が散る。口の中に広がる血の味。思考停止、呼吸すら止まる。
「もっと分かりやすく言おうか、従えと言っているんだ……狂殺者?」
「それを、言うな!」
側頭部に鋭い痛み、昨日と同じ様に踏まれたらしい。もう、目の前は暗く痛み以外に状況を把握出来ない。
「仕方ないな、今日も強引な方法でいかせてもらう」
「やめろ……」
オレの願いなど届くはずもなく。
奴の手が後頭部を掴む、そのまま無理矢理頭を持ち上げられ、
気がつけば、中倉地区のとある住宅街にいた。
「……ミつけたぜ」
視界を過ぎる黒い影、チャラチャラとピアスが擦れる音、巨人と見紛うその体躯。
「キョウはオマエがタノしませてくれんのか?」
焦らずゆっくりと歩く。
その内に確かな殺意を抱いて、今日の狩りが始まった。
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