Prologue Ⅳ

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『……では次です。またあの事件が起こりました』 「来たっ!」 思わず呟いてしまった。 朝五時半に起きて三十分弱。 待った甲斐があったというものだ。 『昨日午後二時半頃、男女三人が倒れていると匿名の通報があり、警察官が駆け付けると宮瀬 雷兎(みやせ らいと)さんが全身を強く打ち死亡、出雲 駆彦(いずも かけひこ)さんが全身火傷の状態で死亡、二十代の女性が意識不明の状態で発見されました』 雷兎(ライト)、とは面白い名前だ。 親は何を思ってそう名付けたのだろうか。 『警察はこの事件を<倉主市連続無差別通り魔事件>の案件と発表、一連の事件の犠牲者は十五人となりました。警察は女性の回復を待って事情を聞くと共に、匿名で通報してきた人物が何らかの事情を知っているとみて捜査を進めています』 画面が切り替わり場面はスタジオになった。 「今日は元警視総監の引浦さんに話を聞きたいと思います、引浦さん……犯人は一向に捕まりませんね?」 「そりゃそうですよ、地方に飛ばされる警官の八割が地方出身者(ノンキャリア)ですからね……地方(いなか)は馬鹿ばっか集まってるんですよ」 "馬鹿"という言葉に顔を若干しかめるアナウンサー。 私はというと自分が住む街を"地方(いなか)"扱いされたのが無性に腹がたった。 「そんな連中に捜査(しごと)させても何にも出てきませんよ、まぁキチガイにはキチガイで対応す」 放送禁止用語が出た瞬間、画面が暗転した。
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