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男の手に握られたそれは真鉄の砲丸球だ。
故に、それなりの重さがありそうだが、それは男の手の平の上に浮いていた。
因みに、砲丸と手の間にはおおよそ使い物にならなそうなケータイが淋しく鎮座していた。
「オレの能力は磁力や磁界を操る事が出来るのさァ……磁界師とでも呼んでくれやァ」
「ありがとう、その名前で呼ばせて頂くわ……醜男さん?」
瞬間、男は砲丸を落とした。
ゴヅンッ、という独特な音と同時に、ポケットに手を突っ込みパチンコ玉を取り出した。
もちろん、店外に玉を持ち出すのは如何なる理由が有ろうとダメである。
それがスロットホールに入れる目的以外でもだ。
固いアスファルトの上へ撒かれた瞬間、地面に到達する前に軌道を変え女へと向かっていく。
ここで初めて女は明確な行動をとった。
まるで空気の波に乗るように、女の体がふわりと浮き上がり地上五メートル付近で静止する。
刹那、女の居た場所を銀色の弾丸が通過した。
「くかか、ようやく本気になってくれたかァ?」
男の問いに女は答えない、女の視線は明確な殺意を宿し、表情は笑っていた。
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