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「!?」
カゴを片手にのんびりと歩いていたミヨシは、異様な風のうねりを頬に感じて咄嗟に体をひねった。強い力がすぐ側を駆け抜け、体が吹き飛ばされて宙を舞う。そして、そのまま茂みの中へ突っ込んだ。
ミヨシと道を挟んで反対側から男が一人現れた。髪は伸び放題で服はボロボロ。疲れているのか、心なしかげっそりしてみえる。そんな彼の右手には、刀身を晒す長剣が握られていた。その長剣は主のくたびれた姿に反してとても美しく、刀身は淡い緑色をして、木漏れ日が降り注ぐこの森によく溶け込んでいた。
男はミヨシがいた地面を見ると、小さく首を振った。そしてミヨシがいる茂みに向かって怒鳴った。
「どうして逃げるんだ、フジタ!」
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