1:prologue

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その相手の顔は、見ることができなかった。 どうしてだか分からないけれど、どう目を凝らしても、ぼやけてしまって見ることが出来ないのである。 しかし、それが男性だということは、直感的に分かった。 そして、彼女が知っている相手のような気がしたのだ。 「あの……あなたは……」 千夏が言いかけた時。 彼女の言葉を遮るようにして、どこからともなくポーンと音がした。 それは遠くの方から聞こえてくるようでもあり、また彼女自身の頭の中で響いているようでもあった。 そこで、彼女の記憶はぷっつりと途切れてしまったのである。
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