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その相手の顔は、見ることができなかった。
どうしてだか分からないけれど、どう目を凝らしても、ぼやけてしまって見ることが出来ないのである。
しかし、それが男性だということは、直感的に分かった。
そして、彼女が知っている相手のような気がしたのだ。
「あの……あなたは……」
千夏が言いかけた時。
彼女の言葉を遮るようにして、どこからともなくポーンと音がした。
それは遠くの方から聞こえてくるようでもあり、また彼女自身の頭の中で響いているようでもあった。
そこで、彼女の記憶はぷっつりと途切れてしまったのである。
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