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ちょっと前までは、駅や帰り道で一緒になると自然と手を繋いでいた。相手からだったり、自分からだったり。
なのに、どうして今は。
楓の頭の中に、自身の声が響いて痛い。頭を突き刺すような痛みではなく、ゆっくりと押し潰すような痛みだ。
「いつからだっけ」
ボソッと呟き、自分の行くべきホームへと向かう。電車はもう来ていた。この駅は終点。ずっと止まっていた。
発車まであと二分。ちょうど良いくらいに着いた。平日の為座席はうまっている。
一番後ろの車両の空きスペースに鞄を置き、跨ぐようにして立つ。
電車の壁に寄りかかると、また自然にため息がもれた。
ふと窓ガラスを見る。駅の風景と映った自分の情けない顔が重なっている。
昔よりはずっと大人びてきたけれど、まだどこかに幼さが残った顔。
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