平熱36度

3/23
前へ
/141ページ
次へ
廊下にはまだ、まばらに生徒がいた。話し込む生徒、移動中の生徒、中には説教を受けている生徒の姿も。 その廊下の窓からは秋晴れの空が覗き、光が差し込んでくる。柔らかいその光は、彼らの足元に各々影をつくっていた。 その影のうちの一つ、楓の影がピタリと止まる。その視線は窓とは反対の方へ向いている。 「どうした?」 「…鈴村さんだ」 「ふーん…?」 章太は突然でてきた知らない名前に疑問を抱きつつも、とりあえず返事をする。 「同じ組の子?」 「おう」 そちらを見たまま固まった楓に、質問する章太。 「好きなの?」 「殴るぞ」 楓が固まったままなのを良いことに、ふざけた質問をする章太。止まった二つの影がまた動き始めた。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

413人が本棚に入れています
本棚に追加