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「なんか…色々な事情があるみたいで」
「……いじめ?」
「イジメじゃないけどさ……なんか、色々」
「本当はよく分からないんじゃねーの?」
一瞬楓の動きが止まり、次の瞬間には何事もなかったかのように動き出す。図星だ。
「軽いお前なんかに教えられるかっての」
「軽いって何だよ軽いって」
章太をいじって、お茶を濁す。そんな所を理解したのか、彼もそれ以上は追求しない。
静かになった二人をよそに、少し騒がしい廊下。ふと上履きを見ると、小さな<3の6 三橋>の文字だけがあった。
隣の上履きには、堂々と<3の7 井上>と書かれている。
その文字が二人の性格を表しているようで、楓は少し苦笑いする。
いつまでたっても、自分は器の小さいやつなのかもな。
ふとそう思った。
まず、器の大小を気にいている時点で俺は小さい人間だ。それに、章太のような思い切りのよさもない。
表向きはきちんと仕切れるリーダー格。実際は裏で色んな人に支えてもらって、助けてもらってるだけのお飾りもの。
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