平熱36度

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さっきだってそうだ。 ポーカーフェイスを気取っても、内心ビクビクしながら生きてるやつだ。 しかも隠しきれてなく、章太にはバレバレだった。 こんなんじゃ、“あの人”に距離を置かれても文句は言えないな。 「なんとかなるって」 隣からふっと声が入ってくる。明るいその声は、暗い頭の中を一掃するようだ。 「そういうもんじゃないだろ」 「悩んでたって意味ないってよく言うじゃん」 あまり説得力のない言い方だが、章太はそれを自慢げに言う。 その雰囲気が、楓を説得させた。 「とりあえずさ、悩むのは受験が終わってから」 「あー、お前も受験生だったな」 「ひどっ」 脳天気なことを言い出した。あまり悩みの無さそうなやつだから、そう言えるのだが。
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