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「イノ、驚かないの」
「俺はいつでもポーカーフェイスでミステリーな男なんだよ。どうってことないさ」
「日本語で話そうか、うん」
「ひどっ」
下らないことを言う章太。自分の動揺を隠す為に、楓は章太の少し前を歩き、冗談を笑う。
「今日の夕飯なにかな」
「あ、鍋が良いな」
「最近さみぃもんなー。ってか俺じじくさっ」
腹減ったよーっ、と章太は伸びをした。食欲の秋である。
章太の小さなため息は、秋にもみ消された。
自身の背中の偉大なる秋に気づく訳もなく、楓は階段をリズミカルに駆け下りた。夕陽によってセピア色になった階段の日溜まりを二人の影が揺らした。
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