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未だ轟音鳴り響く市街地の中、ヘルメットを被った全身タイツの男が静かに、しかし人間とは思えない、まるで獣のような速度で走っていた。
「!!っ」
なるべく土煙の出ないように気をつけながら、徐々にスピードを落としていく。
「くそっ!此処にも・・居ないのか」
此処は緊急時に備え、予め決定しておいた避難場所の一つ。
彼は逃げ回るうちにはぐれてしまった隊員達を探し、既に2つの避難場所を探し終えていた。
「隊長!」
倒壊寸前のビルの影から人影が飛び出す。
「!?ッ」
一瞬敵かと思い身構えるも、聞き慣れた声である事に気付き警戒をといた。
「生きていたか!」
「はい!隊長こそ良くぞご無事で」
「ああ、本当に良かった、・・だが悠長に話している暇はない、他の隊員達は俺が探しておく、お前は早く逃げるんだ。」
「隊長、その必要は有りません。」
「?なんだと」
「こちらです。」グイ
「お、おい、ひっぱるな」
連れて行かれたのはビルの中、
階段を降っていくとシェルターの
ような空間に案内される。
「!?皆、無事だったのか!!」
「イッーーーー!!」」」
「ここにたどり着いた戦闘員は全員誘導しました」
「そうか、よくやっ・・
隊員が全員ではなくても、生き残っている事に安堵するのも束の間、ここで一つの疑問が生まれる。
「・・どういう事だ?私に報告するだけなら一人で良かったたろう。」
「・・・・」
「こんな大勢で逃げ切れるとは思えない、バラバラに逃げて生存率を上げるにしても早い方がよかったはずだ。」
「おっしゃる通りです。」
「ならば何故・・お前の事は信用している、だが時間がない、何か考えがあるなら早く話してくれ。」
「了解しました。」チラッ
「・・・・」」」」コクッ
「隊長・・」
「あなたには、私達が生き残る為の囮になって貰います。」
絶え間なく鳴り響いた轟音は、既に消えて、辺りは静寂に包まれていた。
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