8.竜胆と千日紅

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忌々しいロープを掴む。 触れない。 Uを掴む。 触れない。 何度も手を伸ばしては失敗する俺に、Uは穏やかな顔で首を振った。 どうして俺には「みる」ことしか出来ないんだ。 どうしてみえるのに止められない。 ギリ、と奥歯を噛みしめる。 腰元まで埋まってしまったUは、ロープが絡みついていない方の手を俺へと伸ばした。 慣れない手つきでそっと頬を撫でられる。 「……泣くなよ、どうしたらいいか分かんねぇだろうが。だからてめぇは駄犬だっつーんだよ」 いつの間にか目からこぼれていた雫は、Uの手をすり抜け俺の頬を滑り落ちた。 ぼやけて滲む視界に、パチパチと瞬きをする。 今泣いたら、Uが見えないじゃないか。 「信じられないかもしれないが、俺は幸せだったんだぜ」 柔らかな笑顔を、届かない指先を。 とぷんと最後、飲み込まれた。
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