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本気だ。
こいつらは本気で、ベルを捜すためなら人を刺しても構わないと思っている。
ぞっとするような目をして、男はナイフを一段と強く俺の首に押し当てた。
ちり、と微かな、けれども確かな痛みがはしる。
凛灯先輩!と叫んだ佐久間君の顔から血がひいたのか色が失われる。
「なぁ、てめぇ会計なんだって?よく分かんねぇけどこの学校じゃ随分ご立派な立場みてぇだな」
「てめぇをぶっ殺したらベルも慌てて出てくるんじゃねぇ?試してみるか」
男がにやりと笑う。
刃が更に深く首に食い込んだ。
「っつ…」
「凛灯先輩!も、もう止めて下さい、凛灯先輩を離して…」
佐久間君が半泣きで身をよじる。
男はその反応に笑みを深くした。
俺はこの展開を漫画やドラマのように感じていた。
でも傷つけられ痛む首に、これは現実なんだと平手で打たれたような気がした。
首から胸元へと血が伝う感覚。死という言葉が頭の中で点滅する。
今更震えてきた手を無理やり握り締め、俺は佐久間君をちらりと見た。
なんとかして佐久間君は無事に帰さなきゃ。
「なぁ」
唐突に、澄んだ声の誰かが立ち上がった。
通るぜ、と周りの視線を気にもせず椅子の間をぬってやってくると、俺達の目の前に仁王立ちする。
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