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友樹は俺の言葉に肩から顔を上げて固まると、ふぁうっと変な鳴き声を出した。
「うっうう…うわああぁぁぁ~~~~ぁん」
俺の胸に顔をうずめて子どものように泣きじゃくる友樹に、小さく苦笑いをこぼしてしまう。
自分よりも大きい男を殴り飛ばしたとは思えない程華奢な背中に左手を回し、右手で赤銅色の髪を梳くように撫でる。
腕の中の温もりと、涙で冷たい胸の温度差に、俺は苦笑したまま上を向いた。ドーム型の天井をぼんやりと眺める。
「立花」
不意に名前を呼ばれて、顔を正面に戻す。
…足しか見えない。
斜め上に顔を上げ直すと、樋本と佐久間君が立っていた。
「無事か」
「だいじょーぶだよん、さくまけんはひーちゃんが?」
「おう、友樹がいきなり『注意は俺が引きつけるから、捕まってる1年は頼んだ』っつって飛び出すから驚いたぜ。敵の注意を引きつけるって俺まで固まっちまったしよ」
1から説明しろよバカ友樹、と樋本は眉間に皺を寄せたけど、友樹はまだ泣いていて暫くそれは望めそうにない。
「まぁ、詳しい話は後でにしよっか。ともちゃんとさくまけんが落ち着いたらさぁー」
わんわん泣いている友樹はともかく佐久間君は関係ないだろうと、訝しげに隣を見やった樋本はうぉっと驚いた。
「な、てめぇも泣いてんのか」
友樹とは対照的に静かにぽろぽろ涙を落とす佐久間君。
嗚咽も漏らさずひたすら泣き続ける彼の姿は痛ましくて、見ているこっちまで苦しくなってくる。
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