6.竜胆と菖蒲

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樋本はその様子にあ゛ーやらう゛ーやら唸りながら後頭部をガシガシ掻く。 イライラと顔を歪めあぁくそ、と悪態をついたかと思うと、突然思い切り隣の彼を抱き締めた。 「!?」 「……あー、のよ…もう、危なくねぇよ。立花も大した怪我してねぇし犯人もぶっ飛ばした、だから、その………チッいつまでも泣いてんじゃねーよカス、男だろうが!シャキッとしやがれ!」 最後ぉぉぉーーー! 途中まで頑張ってたのにどうして最後怒っちゃったんだい! 慰めるなんて慣れないことだけどさ! あとほんの少し優しさと忍耐力を!! 心の中の全力のツッコミなんて知らない樋本は、怒鳴った後プイッとそっぽを向いてしまった。 いきなり抱き締められ怒られた佐久間君は、びっくりしたからか涙が止まったようだ。 大きく見開かれた目からポロリと最後の雫が頬を伝った。 えっ…と、もしかして樋本が怒ったのって照れ隠し、なのか? てか…俺の胸にしがみついたまま大泣きの友樹、抱き合ったまま固まった2人、未だ展開に着いていけずざわついた全校生徒+α。 一体誰がこの場を収拾できるんだろう? 困ったなぁと途方に暮れかけた時、放送の機械音が鳴り響いた。 全員の意識がスピーカーに集まる。 「あ、あー、聞こえているな貴様ら」 この声この口調、まさか桐生先輩?
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