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「話は俺様も知っている。が…やれるな」
姿は見えないけれど、桐生先輩が俺を見つめているような感覚に陥る。
友樹が心配そうに俺の名前を呼びながら見上げてくる。
俺は、転がったままの男たちを、佐久間君を、樋本を、友樹を、座ったままの生徒たちを、順繰りに見て、大きく息を吸った。
そして全て吐ききって、スピーカーを見て呟く。
「勿論」
ふっ、と。
俺の言葉が届いている訳ないのに、桐生先輩が笑った気がした。
「この後予定通り教室に戻ってもらう。指示は立花が出すから速やかに移動するように。侵入者は1人残らず捕獲済みだ、心配せずに動け。詳しい説明は教室で待て」
それだけ言うと、ぶつりとマイクが切れた音がした。
放送が終わったことを告げる機械音が響く。
少しざわめいた場内を一瞥して、俺は立ち上がった。
心配そうな友樹は樋本に預ける。
佐久間君も抱いたままだから、両手に花の状態だ。
と考えていたら吹き出しそうになったので、慌てて堪える。
若干我慢しきれなかった分を咳払いで誤魔化しながら舞台に上がった。
置きっぱなしだったマイクを手に取り電源を付ける。
ポンポンと数回叩き電源が入ったか確認して、俺は口を開いた。
「はーいご指名頂きました、みんなの立花でっす。かいちょーの言う通り、今からぁ退場してもらいまーす。まずは出口に近いー3年S、A組は起立ぅ、自分の教室に帰って下さーい。進藤せんせー扉開けてぇ~」
ひらひらとこちらに手を振って、進藤先生は扉を開けてくれた。
本当タメ口とか申し訳ない。直接は言えないけど謝っておこう。ごめんなさい。
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