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汚したり傷つけたりしないように気を付けようと、冷や汗を流しながら浅く座りなおす。
雅弥さんは俺たちが全員座ったのを確認すると口を開いた。
「じゃあ知っていることを話してもらおうか。立花君からどうぞ」
まぁ妥当な人選かと心の中で頷き、俺は雅弥さんに向き直った。
***
時折質問に答えながら交代もしつつ話し終わった頃には、随分時間が経ってしまっていた。
雅弥さんの秘書である50歳も過ぎた初老の男性、松永─まつなが─さんが最初に出してくれた紅茶も、いつの間にか湯気を揺らすことを止めてしまっている。
空斗が言うには、こういう場合の秘書は若いイケメンメガネで理事長とのフラグ建設済みらしいんだけど…。
雅弥さんの秘書を決めた時につーちゃんが───
と、今はそんなこと関係ないか。
雅弥さんは険しい顔で俺たちの話を聞き続け、少し視線を落とした。
一口だけ口を付けたカップが寂しそうに机にいる。
「うん、話してくれてありがとう」
雅弥さんは俺たちを順繰りに見てふわりと微笑んだ。
「これからまた何度か呼ぶだろうけれど、その時はまた協力してくれるかい。立花君にはまだ聞きたいことがあるから残ってもらうけれど、君たちはもう帰っても大丈夫だ。怪我はしてないみたいだけど一応保健室に行っておいてくれ。松永」
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