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不意に握りしめた手のひらをそっと掴まれ、俺は少しビクリとしながら旋毛を見下ろした。
赤い眼鏡に隠された黒い瞳は、真っ直ぐ黒いカタマリを見つめている。
そのまま、Uは一度瞬きをすると真剣な表情のまま言った。
「それしっかり持って離すなよ。後ろの奴らはてめぇが守れ。あと、」
喜べ。こいつの体、返すぜ。
え、と一音声が漏れる。
止める間もないまま、Uがりーの体からふわりと剥がれる。
グラリと倒れかけたりーを慌てて抱きしめるが、りーの意識はない。
原因はUにとり憑かれていたことだろうから大して心配はないだろう。
ただこんな状況でりーから離れたUの意図が読めなくて、俺は困惑しながらりーをギュッと抱きしめた。
『よう、お久しぶりだな』
【……………ゾ……】
『随分と中身に見合った見た目になったじゃねぇか。良かったなー』
【……様……………ンゾ】
『てめぇは絶対来ると思ったぜ。残念だったな、この俺様にはぜーんぶお見通しだっつーの。ヒャッヒャッヒャ』
【……様……様ニ………ヤ……ゾ………】
『全くよー来るんならもっとちゃきちゃき来いよな。遅刻だ遅刻、罰金刑に処すぞ』
【……様…ヤ…ンゾ……俺………モノ…】
『お陰でこの俺が借りてた体の真似しなきゃいけねぇ羽目になったんだぞ、精神的苦痛に対する慰謝料を請求する。裁判も辞さない構えだ』
【……貴様……………】
『まぁまぁそう焦んなよ。次は法廷で会おうぜ。てめぇには俺の他にも訴訟が山ほどあるしな。ただし』
相手はブツブツと何事かを呟くだけのまるで噛み合わない会話を続けたUは、ニヤリと心底愉快そうに微笑んだ。
両手を広げて大きな声で喜色が滲む声で告げる。
『ただし、受けるのは地獄の裁きだけどな!』
【貴様ニハヤランゾ!俺ノモノダ!!】
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