2466人が本棚に入れています
本棚に追加
口なんてないように見えるのに、ねっとりとした何重にも聞こえる声でカタマリは叫んだ。
無理矢理出したような嫌な声が頭に響いてキンと耳鳴りがする。
ドロリとカタマリの一部が興奮した声と共にこちら側へ溶け出す。
そのぞっとするような光景に、俺は痛む頭を押さえながら思わず手の中の水晶をカタマリに向かって投げつけた。
ギャア、とカラスのようなしわがれた悲鳴をあげてカタマリが怯んだように止まる。
その瞬間、唐突にUの思考を理解して俺はUを引き止めようと手を伸ばした。
けれどそれは一瞬遅く、Uは俺の手から逃げるようにその身を踊らせた。
ダメだ、と絞り出すように言うも、Uは真っ直ぐカタマリへと飛び込む。
【ヤメロ、離セ!ヤメロヤメロヤメロ!!】
『ヒャッヒャッヒャ、離すワケねーだろバーカ。言ったろ、てめぇは地獄に行くんだよ。俺と一緒にな』
【離セ!ヤランゾ、貴様ニハヤラン、アレハ俺ノモノダ!】
『ギャーギャーうっせぇぞ』
【ヤランヤランヤラン!俺ノモノダ、アレハ俺ノモノダ。ヤランゾ。俺ノ、俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ俺ノ】
『諦めなじーさん、あいつはてめぇの物じゃねぇよ。だからこんな所で教師なんかやってんだろ。それにてめぇはもう』
「U……それ…ダメ………!」
死んでんだよ。
俺の制止を無視してUがそう告げた言葉が、カタマリをロープで縛るように締め付けた。
その言葉のロープはUの手首にもぐるぐると巻きつく。
最初のコメントを投稿しよう!