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ふう、と息をつき、Uは頭を掻いた。
俺は何も言えずにただ立ち尽くしていた。
Uが語った真実は俺たちの生きる世界の闇を露わにしていて、人の命をあまりに軽く扱う当主がいるのはとても恐ろしいことだった。
裏の世界は家の名前が地位の上下を決める。
そして、その地位が非常に重んじられるのだ。
倫理的に外れた行動をする人が高い地位を持っていることは、水門家の一員としてぞっとした。
そして。
『…まぁ、てめぇには感謝してるよ。俺なんて祓おうと思ったらいつでも祓えただろ』
「…1回……言った…………りー…ため…」
『へーへー、最後まで可愛くない奴だな。ったく、気づかれたならさっさと済ませちまうか』
Uの無償の愛は。
「…!?」
『………これでも、お前には本当に感謝してるし、悪いと思ってる。忘れちまいな、全部全部。俺は初めから死んでたんだ、お前が何をしようと関係なかった。いいか、忘れろよ馬鹿わんこ』
俺の呼吸を止めるには充分だった。
Uの目は、見たこともない悲しみと慈しみの色に満ちていた。
その台詞と目で、りーに取り憑いてから今この時までのUの行動の意味を完璧に理解した俺は青ざめた。
嘘だろ、そんなのUの柄じゃないし、そんな、そんなことが許されるのか!
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