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忌々しいロープを掴む。
触れない。
Uを掴む。
触れない。
何度も手を伸ばしては失敗する俺に、Uは穏やかな顔で首を振った。
どうして俺には「みる」ことしか出来ないんだ。
どうしてみえるのに止められない。
ギリ、と奥歯を噛みしめる。
腰元まで埋まってしまったUは、ロープが絡みついていない方の手を俺へと伸ばした。
慣れない手つきでそっと頬を撫でられる。
「……泣くなよ、どうしたらいいか分かんねぇだろうが。だからてめぇは駄犬だっつーんだよ」
いつの間にか目からこぼれていた雫は、Uの手をすり抜け俺の頬を滑り落ちた。
ぼやけて滲む視界に、パチパチと瞬きをする。
今泣いたら、Uが見えないじゃないか。
「信じられないかもしれないが、俺は幸せだったんだぜ」
柔らかな笑顔を、届かない指先を。
とぷんと最後、飲み込まれた。
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