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「こ、こんな時まで軽口叩きやがって!馬鹿!」
「ヒャッヒャッヒャ、いつでもどんなときでも俺は俺だよ、知ってんだろ?それに、今は死ぬほど気分がいいんだ。もう死んでるけど」
「ブラックジョークはやめろ、反応しにくい。…………そうか、やっぱりお前、」
「あぁ、さっきも言ったろ。16年前に死んだよ。お前の父親どうなってんだ、ガチで血の繋がりを疑うね俺は」
ポンポンと途切れることのない応酬は、2人の間に16年もの途切れていた年月があることを感じさせないものだった。
ヒヤリとするような言葉もお互い軽く流せるようで、片方が既に死んでしまっているだなんて到底思えない。
「それは……」
「あー、まぁいいわそんなことどうでも。それよりもなぁ、隆宏、もう一回呼んで、俺の名前」
「…夕悟」
「もう一回」
「夕悟」
「もっと」
「夕悟、夕悟、夕悟、夕悟、夕悟、ゆうご、ゆう、ご、ゆうご、…っご…」
「おいおい、いい年こいた大人が泣いてんじゃねーよ…ったく、今の俺じゃ、お前の涙拭ってやれねぇんだから」
堪えきれずボロボロ涙を流し始めた志波先生に、夕悟は近寄り頬を撫でた。
手をすり抜けていく涙に、夕悟は目を細めて笑った。
触れられないことを知っていながら、そっと志波先生の頬を両手で包み、額を合わせる。
「…あーあ、15歳の俺と同じ身長って、なぁ。これは俺の方がでっかくなってたに違いねぇわ、もったいねー。…もったいねーよ、本当」
「……ずっ、ん、そんなん、分かんないだ、ろ。お前も、伸びなかったかも、しんないし、っけほ、」
「…お前に流れた16年と、俺にはもう流れない時間が、想像以上にデカくて、その何十年がもったいねーなって思ったんだよ。だから、俺はあの世で待って、何十年待って、なにがあっても待ち続けてやるから。隆宏、お前はゆっくり来いよ。絶対だぞ」
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