8.竜胆と千日紅

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「…は、なしの、脈絡ないな、馬鹿」 「馬鹿馬鹿うるせー!いいだろ、話したいことなんて山積みだっつーのに時間はないんだから、言わなきゃなんねーことからどんどん言ってかねぇと」 「時間、ないのか、うっ、ずっ」 「そうだな」 全然足りねーと呟き、夕悟は言葉を重ねた。 飯はちゃんと食え、自分のこともっと考えろ、父親のことでお前が背負うものはねぇ、夜は早く寝ろ徹夜はするな、生き急ぐな、名前呼んでくれて感謝してる、風邪ひくから髪は乾かせ、教師は続けろ、夢叶えてて安心した、あと、あと。 あちこちとぶ内容に、志波先生は泣きながら笑った。 「分かった、分かったって、はははっ」 「…あと、30過ぎても結婚してないのって、自惚れてもいい?」 「……生憎、孫を見せる相手もいなくなったからな。結婚して子どもつくって、っていう真っ当な幸せを掴む必要ない。それに、あの世で待っててくれるんだろ?酷い男だよ、こんなに幸せにしといて、置いていくんだから」 「お前の幸せが俺と一緒でよかったわ、ヒャヒャッ。なぁ、隆宏、」 結婚しよっか。 そう密やかに告げた夕悟に、志波先生は目を細めて笑った。 それは夕悟と似た顔だった。 「幽霊でも泣けるんだな」 「うるせ、俺も今初めてしったわ」 「………バージンロードがあの世への道とはね、ふはっ、ははっ、おっかし、男同士なんて今更か。人間と幽霊の結婚の前には軽い問題だな、ふふ」 「お前のブラックジョークもどうよ」 呆れた顔した夕悟だったけれど、足の先から光り解けだしたことで一瞬目を丸くした。 しかしすぐに1つ頷いて、足をブラブラさせた。
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