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「誰かいないのぉー?」
呼びかけながら部屋を見渡すと奥に人影がぽつり。
部屋の電気をパチリとつけて俺は不審に思いながらその影に声をかける。
「…あまねんじゃーん、どぉしたのこんな暗いとこでー」
そこにいたのはいつものオーラをなくした桐生先輩だった。
俺の声にゆっくりと顔をあげ、立花かと呟く。
「あまねーん?」
覇気のない様子に再度名前を呼ぶも、桐生先輩は心ここに在らずといったようでぼんやりしている。
「他の役員はぁ?」
「…知らん」
「仕事はぁ?」
「…積み上がっている」
「あまねんはーいつからここにいるのぉ?」
「…昨日の昼」
昨日の昼ってことは…
食堂でキスして帰って行った後からずっと生徒会室にいるってことか。
何となく状況を理解した俺は、質問にも力のない答えを返す桐生先輩を横目に会計席に座った。
そして言葉通り積み上がっている書類から数枚抜き出すとペンと電卓、判子を机に並べた。
しばらくペンを走らせる音だけが響く。
お互い無言の中、沈黙を破ったのは俺だった。
「あの時」
顔をあげずに独り言のように呟く。
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