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「何故王様はキスする相手じゃなく家臣達を見たのでしょうか」
桐生先輩がこっちを見ているのを無視して次の書類を手に取る。
「その答えは優しい王様にしか分かりません」
俺は会議の資料を棚から探しすために立ち上がった。
きれいに並べてあるファイルの中から目当てのものを、人差し指を引っ掛けて手にとりペラペラめくる。
「桐生天音会長はどうしてだと思います?」
あった、と一枚紙を抜き出し再度席に戻る。
「…俺、様は……」
か細い声が聞こえるも、桐生先輩が続きを言うことはなかった。
「…家臣はこう思いますよ」
会議の書類をまとめ終わり、俺は席を立った。
こつりと足音を響かせ桐生先輩の前に立ち書類を差し出す。
「宝石や地位を狙う者達にはもうこりごり。だけど」
今は桐生先輩が座っているのでいつもと違い俺の方が目線が上だ。
見上げてくる桐生先輩の赤い目を見つめる。
「ともちゃんならだいじょーぶ。あまねんが心配することないよぉ」
へらりと笑った俺に、桐生先輩は喉を鳴らした。
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