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「んなこた分かってんだよ」
不機嫌そうにその重石を握る桐生先輩に、俺は肩をすくめた。
「お金持ちは大変だねぇ」
友達になるにも恋をするにも相手の真意をはからなきゃなんて、なんてめんどくさい。
金持ち代表桐生先輩は頭をがしがしとかきまわしうなだれる。
心なしか赤メッシュもしょぼんとしている。
と、いきなり桐生先輩は勢いよく立ち上がった。
目の前にいた俺はうおっとのけぞる。
そして生徒会室を出て行こうとしたので慌てて引き止める。
「ちょ、どこ行くのあまねん」
「転入生のとこだよ」
何をしに行くのかと疑問符が浮かぶのを見て、桐生先輩はあーやらうーやら唸った。
「…昨日はいきなりキスしたから謝りに」
結局口を割った桐生先輩に、俺は目を丸くしたあと思わず吹き出してしまった。
クスクス笑う俺の顔を桐生先輩はファイルで叩く。
バシンと大きな音が鳴る。
「へぶっ」
「笑うんじゃねーよ。帰りに麻怜達拾ってくっから仕事しとけよ」
そう言ってファイルを投げつけると今度こそ出て行った。
「この国の王様は優しいな」
一人取り残された俺は痛む顔をなでながら生徒会を出た。
…仕事?
だから何のことだか。
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