1.竜胆と木藤

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「んなこた分かってんだよ」 不機嫌そうにその重石を握る桐生先輩に、俺は肩をすくめた。 「お金持ちは大変だねぇ」 友達になるにも恋をするにも相手の真意をはからなきゃなんて、なんてめんどくさい。 金持ち代表桐生先輩は頭をがしがしとかきまわしうなだれる。 心なしか赤メッシュもしょぼんとしている。 と、いきなり桐生先輩は勢いよく立ち上がった。 目の前にいた俺はうおっとのけぞる。 そして生徒会室を出て行こうとしたので慌てて引き止める。 「ちょ、どこ行くのあまねん」 「転入生のとこだよ」 何をしに行くのかと疑問符が浮かぶのを見て、桐生先輩はあーやらうーやら唸った。 「…昨日はいきなりキスしたから謝りに」 結局口を割った桐生先輩に、俺は目を丸くしたあと思わず吹き出してしまった。 クスクス笑う俺の顔を桐生先輩はファイルで叩く。 バシンと大きな音が鳴る。 「へぶっ」 「笑うんじゃねーよ。帰りに麻怜達拾ってくっから仕事しとけよ」 そう言ってファイルを投げつけると今度こそ出て行った。 「この国の王様は優しいな」 一人取り残された俺は痛む顔をなでながら生徒会を出た。 …仕事? だから何のことだか。
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