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こんな風に友達と、笑いながら歩くなんて、前の家の頃の私には有り得なかった。
独りきりになった私に、友達と笑う余裕なんて無かった。
幸せそうにしている人達が憎かったから。
―どうして、私だけ?
―あの子達と、何が違うの?
遣り切れない思いばかりが、私の心に溜まっていく。
(…林汰が居なかったら、私はどうなってたんだろ)
「柚子、またつまんないこと考えてるだろ?」
「え、…やだなー、そんな訳無いよ」
「嘘は言うな」
「またバレた…」
林汰もトミーも、私の気持ちが見えてるのかな。
そうだとしか思えない。
「私はさ、柚子が家族のことで悩むのは咎めない。それは優しさだから。でもな」
「でも?」
「今、私と話してるのは柚子だろ。なら、そんなつまらない顔するなよ、な?」
トミーが少し大きい手で、頭をワシワシと撫でてくる。
多分、こんな良い友達、他にいない。
「…トミーは、姉御みたいだね。つい頼っちゃうよ」
「忘れ物以外なら、頼って良いぞ」
「あはは…っ、そうだね、忘れ物は頼っちゃ駄目だよねー」
私が笑うと、トミーも笑う。
あの頃の気持ちなんて、もう私の心には無い。
(ちょっとは前に、進めたよね)
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