「いただきます」

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六年前、私の家には高二の兄と、小三の妹と、小六の私が居た。 もっと詳しく言うと、一応両親も居た。 だけど、両親は離婚して姿を消した。 離婚すると同時に、私達兄弟もバラバラになった。 悲しかった。 たった二人の兄弟達と離れるのが、悲しくて堪らなかった。 でも、今は悲しくない。 何故なら- 「柚子!さっさと起きんか馬鹿野郎!」 「…林汰うっさい」 「煩いだと!?朝ご飯まで作ってくれる兄貴になんてこと言うんだ。この不良妹め」 「黙れ、オカン兄のくせに」 「オカン言うな、せめてオトンにしろ。てか、早く着替えてご飯食うぞ」 「あーい…」 この通り、高二になった私は今兄弟と暮らしている。 多分、一階には中三の妹の柑菜もいる。 私達兄弟は、バラバラになってから六年かけて、この元住んでいた家に戻ってきた。 兄の林汰は、私達兄弟ともう一度家族になるため、ドラマの脚本を書いてお金を貯めていたらしい。 実に、五年と六ヶ月毎日働いていたと笑いながら教えてくれた。 それを知ったとき、涙が溢れた。 (林汰はなんだかんだ言って、家族が大好きだったからなあ…) 約六年間、林汰がどんな思いで働いていたのか、私は知らない。 辛かったのかも知れないし、挫折だってしたのかもしれない。 それでも、私達がこの家に居れるのは、間違いなく林汰の努力のおかげだ。
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