「いただきます」

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「柚子ー!早く降りてこーい!」 「今行くー」 制服に着替えて階段を降りると、柑菜が椅子に座って待っていた。 「柚子姉おっそいよー。ご飯冷めるから早く食べよっ」 「柑菜は元気だねぇ…。アン〇ンマンみたいだ」 「え、やだなアン〇ンマンとか。私あんこ嫌いだよー」 「好き嫌いする子は背伸びないぞ」 「あはは、私より小さい柚子姉がそれ言うんだ」 「ふん、どーせチビですよ」 高二で153㎝は悲しいよね…。 「おい、チビ共。朝ご飯だぞー」 お前はか〇じいか。ちょっと林汰にツッコミたくなる。 「誰がか〇じいだって?」 「え、テレパシー?」 「顔に書いてあるんだよ、馬鹿柚子」 「誰が馬鹿だ、禿げ林汰」 小さな言いあいをして、全員席に着く。 「「いただきます」」 声を揃えていただきますを言う、それが私達兄弟の第一のルール。 これは柑菜が決めたこと。 前の親戚の家が、いただきますを言わない家だったからだそうだ。 「はふー…林汰の味噌汁は美味しいね。嫁に出しても恥ずかしくないよ」 「嫁に出る俺は恥ずかしいんだが」 「なら、私はお婿さんだねー」 馬鹿馬鹿しい会話が、リビングに響く。 味噌汁を飲んだ後の体の中に残る温かさは、家族の温かさと似てると思う。 因みに味噌汁は私のリクエスト。 林汰が毎朝作ってくれている。 「そーいや、新しいドラマの題名決まったぞ」 「どんなの?」 「『ホトトギスがやってきたよ』だ。なかなかユニークだろ?」 相変わらず、林汰はネーミングセンスが抜群に悪いな…。 「何それ、林汰兄ネーミングセンス無さ過ぎー」 「設定は家族の話なんだよね?」 「おう、ホトトギスが家族を繋いでくれるっていう話だ。来月の木曜日の夜八時から」 「ホトトギスか…、今日の晩ご飯は鶏肉食べたいな」 もっと言うなら唐揚げか、親子丼。 「賛成っ」 「うぇっ…、お前ら、ホトトギスから鶏肉を連想するなよ…。恐ろしい奴らだな」 林汰が眉を八の字にして、嫌そうなな顔をする。 それでも晩ご飯は、私達のリクエスト通りなんだよね。 「柚子遅刻するぞ」 「何で私限定なんだよ」 「柑菜の学校は五分で着くけど、柚子の学校は三十分もするからだ」 「はいはいっと…、ごちそうさまでした」 「どーも」 「んじゃ、行ってきます」 「気をつけて行けよ」 「行ってらっしゃーい」
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