新入りという名のもとに

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処遇部長の講話を姿勢をただして 聞く。 内心は 「早く終われよ」 と罵倒する。 顔を動かさず眼で周りの表情を 見渡す。 視界に入るのは、ショウリとナカ オだけだ。 お世辞に二人とも真剣に聞いてる 顔とは言い難い。 おそらく、他の人間もそうかな? と思う。 俺は集中力に欠ける人間なんだと こういった場面になるとつくづく 思うし、自己嫌悪になる。 そんな上の空でいても時は流れる。 処遇部長の話しが終わった。 簡潔に言えば、入所から出所まで の流れの説明だった。 話しが終わり、再び作業になる。 するとしばらくしてペヤングが 「用便回すから、 したい奴は並べ」 と指示してきた。 トイレは一階にあるので、ペヤン グがついてくる。 トイレに行けるのは、午前中三回 午後二回だ。 人間の生理現象だが、勝手には行 けない。 無断で持ち場を離れたら (無断離席) という不正行為にあたるので懲罰 の対象になる。 だから、行けるうちは尿意が無く ても絞り出すのが懲役だ。 トイレを済ませ、作業に取り掛か る何か用件があるなら黙って挙手 する挙手してると担当が名前を呼 ぶので呼ばれたら、用件を述べる。 それ以外は私語禁止。勿論お喋り も立派な不正行為に該当する。 だから基本工場は、静寂につつま れている。 「作業やめぇ」 と突然ペヤングが叫んだ。 素早くかたずけ、工場内の清掃に みんなで取り掛かる。 掃除を終えて、点呼をとって舎房 に行進して帰る。 舎房は昨日までいた独居舎房では なく、雑居に前期の六人で入り 生活することになった。 「やっとアゴの運動できるぜ」 と思ったが、六人部屋に入ると ペヤングが 「お前ら雑居だからと言って勘違 いすんなぉぉ。新入は雑居でも私語 禁止だからな。舎房の先生たちが見 て私語していたら全部、俺のところ に報告くるからなぁ」 とかましてきた。 「新入りは扱いが酷いな」 と思ったが仕方ない。 新入りは何処もこんな扱いだろ。 「始めの内に厳しくしなければ刑務 所が甘く見られてしまうからな」 ペヤングはそう言い残しいなくなっ た。
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