新入りという名のもとに

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アルプス体操とは松本少年刑務所 の代名詞であり、松本と言えば アルプス体操と言われるくらいの ものである。 解りやすく例えるならラジオ体操 を複雑化したような体操である。 この時は初めて踊ったからペヤン グからは、何も言われることなく 終了して朝の運動が終わった。 工場に着くと配食係の大ちゃん等 が配食を始める。 他の人間は、席に着き黙想で待つ。 準備ができたら食べ始める。 だが、娑婆で好き勝手やって来て 更には、拘置所生活でお菓子太り が大半の運動不足の人間が朝っぱ らから走らされたあとに飯が喉に 通るわけがない。 ましてこの時は真夏の時期だった。 周りは食べ残しだらけだったが、 俺は、体力には自信があったし体 をそれなりに鍛えていたから何に も思うことなく普通に食べれた。 食べ終えてからすぐにグラウンド にて行動訓練及び運動だ。 まずはペヤングに合わせグラウン ドを走らされる。 始めのうちはみんなついていける が、5周くらいから遅れる人間が 目立ちはじめる。 俺は少年院にも1年7ヵ月入った 経験もあるし、これくらいではな んとも思わなかった。 それに負けず嫌いの性格だからつ いていけないと周りから 「なんだあいつ? これくらいで!」 と思われたくないのもあった。 汗だくになりながらも完走し、 休む間もなくアルプス体操の 練習だ。 ぶっ通しでキツくなってきたが耐 えるしかない。 午前中は運動地獄だった。 終わったら工場に戻り昼食。 そして午後は幹部の講話。 そんな日々が続き気がつけば あっという間に訓練期間が終わり いよいよ一般工場に出る日が やって来た。
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