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翌朝、起床の号令がかかる前に眼
が覚めた。松本は、起床が7時だ。
刑務所は時計がない。時計がある
と職員の行動パターンが把握され
てしまう恐れがあるからだ。
だが、ここに服役する迄の間、
拘禁生活が長い分、体内時計とい
う原始的なものがあるので大体の
時間は解る。
眼が覚めてから30分はしただろう
か起床になり慌ただしく布団を
たたみ洗面をしていると
「点検よぉぉ」
と聞こえた。そして
「点検ぇぇん」と同時に
「○室番号ぉ」「○室番号」
と遠くから次第に声が大きくなっ
てきて俺の房に来て
「番号」
とオヤジが叫んだので
「280番」と返す。
この儀式は朝夕必ず行われる。
人員の確認のためである。そして
「点検終了」の号令で解除。
起床からこの間、約10分だ。そし
て朝飯が配当される。
朝飯は一汁一菜で、質素なものだ
が娑婆では健康食にあたる物なの
で健康には確実に良い。
食べ終わり、掃夫がから下げに
来た。掃夫とは独居で生活してい
る者の世話役だ。
勿論、受刑者から選抜される。
ただ掃夫は受刑者の中のエリート
が施設に選抜されるので不正行為
はまずしないと見ていいだろう。
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