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医者はその様子をじっと観察
している。
そして
「気分の高低はない?」
また、質問してくる。
「無いです。
一定しております。平穏です」
無難に俺は答える。
「夜中に急に人の声が聴こえ
たり、UFOや電流がこない?」
医者の質問が続く。
「演説の客観的事実だけです。
他は一切ありません」
ここも無難に答える。
「君、IQは知ってるかい?」
突然、変化をいれた質問を
医者がしてきた。
何か意図があるのか勘繰ったが、
間をあけるとマズイと
思ったので俺はすぐに答えた。
「知ってますよ‥‥分類課に
よれば僕のIQは
百三十以上あるとか‥‥‥‥」
以前、分類課からIQの事に
ついて高い事を指摘された事を
思い出し、自慢気に俺は答えた。
「へぇ‥‥‥‥‥良すぎるね。
それも問題かな‥‥」
そう言って医者はカルテに
走り書きをしている。
「す‥‥すいません。
以後、気をつけます」
とっさに俺は謝った。
何に気をつけると
いうんだろうか。
少しでも頭がおかしいと
思われない為に必死だった。
IQが六十以下だと精神疾患の
MX級に分類されると
聞いたことがある。
それで高い事を自慢してみたの
だが、高すぎても
パトグラフィーなどが
得意の精神科医は病人と
みることもある。
ーーー診察は終わった。
八十点の出来だっただろう。
帰れるのを待った。
しかし、一回の診察だけでは
帰れなかった。
最低でも後、二、三回は必要
だと担当の職員や看護助手は
無情にも言いはなった。
‥‥‥‥落胆。
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