『苦い雨は枯れた。』

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しとしとと鬱陶しく降る雨の中、私は一人で立っていた。 ここは、どこなのだろうか。 周りの景色から、公園であるのだろうことは見て取れたが、全く知らない場所だった。 だが、どうやってきたかもわからない。 たぶん、目が覚めたら、ここに居た。 捨てられたのだ、この場所に。 そう思った。 私は泣いた。 泣き続けた。 声が枯れるまで声を上げた。 でも、なにも変わらなかった。 外の道路を走る車。 傘をさして歩く人。 建物から漏れる明かり。 すべてが憎たらしい。 どれもこれも、冷たく冷えた心を切り刻む刃に思えた。 初めて、胸のここが痛くなるということを知った。 こんな事でしか、心の存在を知ることができないようだ。 そして、声は枯渇し、溜まっていた疲労が私を襲った。 近くのベンチに横になる。 喧騒は痛いほど耳に届くのに、こちらからはなにもコンタクトをとれないような世界。 言うなれば、マジックミラー。 それは、それだった。 もう、涙も落ちなくなった。 眠い。 瞼が自然と下がっていく。 広がる闇。 それは、外界よりも幾らかましだった。 目が覚めた。 東の空からは元気な太陽。
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