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この施設に来て、一ヶ月がたった。
両隣は、空室のままだ。
友人を失った私は、毎日、外を見るか寝るかしかしなかった。
後二ヶ月しか自分の命がないと思うと、ご飯ものどを通らなかった。
すっかり、落胆していた。
一種の諦めかもしれない。
だがある日、風が心地よい日があった。
その日だけは、なんだか気分も優れていた。
ベッドに寝そべって、ごろごろするにはちょうどよすぎた。
そんな折り、部屋のドアが開けられた。
逆さまのままドアの外を見ると、あの汗かきのおじさんが立っていた。
訂正、汗かきのおじさんと、格好良さげなお兄さんが立っていた。
汗かきのおじさんは、こちらに手を伸ばした。
その手を、恐る恐るとった。
久しぶりに、誰かにふれられた気がする。
そして、お兄さんに私を抱かせた。
誰かに初めて抱きしめられた気がする。
「かわいいなー。ねぇ、俺んとこ来なよっ!」
私には、訳がわからなかった。
汗かきのおじさんは、なんだかにこにこしているし。
「良かったな」
おじさんにこんなことも言われたし。
「よし、今日からお前はティアだ」
「じゃあ、よろしくお願いしますね」
おじさんに、頭をなでられた。
何とも微妙な気分になったので、体をよじった。
二人に笑われた。
どうやら私に、親代わりができたようだ。
周りの者が、全員私を見た。
一ヶ月前の私のような気分なんだろうかと思った。
運命は、刹那的で、そんな運命に、私は生かされた。
嘘。
私は、優しそうな感じのするお兄さんに、拾われたのだ。
* * *
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