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タンホイザーゲートのリングの内側は、まるでシャボン玉の液を張ったように、不思議な光が波打っていた。
二人を乗せたシップは、タンホイザーゲートのリングをくぐると、体感的に速度の変化は感じないが、窓から見える景色は、様々なシップが行き交う宇宙空間から一変して、七色に輝く光の放物線へと変わる。
しばらく放物線の中を進んでいくと、前方には円形の闇がポッカリと口を開けていた。
そこを抜けると、窓の外は、また元の宇宙空間に戻る。
しかし、行き交うシップは火星近辺の物とは仕様が違うものばかりで、ネオンのような赤や黄色の光で彩られた船体に、何やら知らない漢字が書かれている。
「あの漢字、何て読むの?」
レッドが聞くが、どうやらブルも知らないようだ。
「さぁな。そう言えば、チャイニーズの文字は難解で、一つの言葉でも意味は一様じゃないって、昔ボブ爺さんが言ってたな。」
「ボブは何でも知ってるな。」
「そうさ、奴は婆さんの機嫌の取り方以外なら何でも知ってる。」
どうやらボブは家庭では尻に敷かれているらしい。
そんなどうでもいい情報にもレッドは熱心に頷いている。
それもその筈、アンドロイドは産まれてから10歳になるまで、製造した企業が運営する施設で教育を受け、目的に応じた知識や技能を身に付ける。
そして、10歳を向かえると作業現場に出荷されるのだが、レッドはそれから、ずっと火星の地下で暮らしていた。
外の世界を知らないのだ。
その為か、外の世界の情報ならどんなものでも興味の対象らしい。
そうこうしているうちに、シップは上部がガラス張りになった筒を寝かせたような形状の衛生程ある巨大施設の前まで来ていた。
ガラスの内側には高層ビルが林立しており、読み方の解らない漢字が書かれた看板が沢山掲げられている。
ここが総人工13億の巨大都市、中華コロニーだ。
「この中から、たった一体のサイボーグを探せってんだぜ?」
(骨が折れるな。)
シップがコロニーの真下に入り込むと、頭上でハッチが開いた。
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