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「なぁ、ここさっきも通らなかったか?」
(ああ、通った気がする。)
このスラム街は、通路や階段が入り組んでいて、まるで巨大な迷路のようだ。
ブルとレッドの二人は、早くも道に迷っていた。
朽ちた建造物の窓からは、生気の失せた目をした老婆がこちらを睨みつけている。
「婆さん、ちょっと聞きたい事があるんだが……。」
「…………。」
ブルが声を掛けるが……老婆は無言で窓の奥の闇へと姿を消した。
「なんだよさっきから。ここの住人はこんなのばっかじゃねぇか。」
すると、通路を塞ぐようにして吊された洗濯物の向こうから歩いて来る人影にレッドが気付く。
(なんだろう……ここの住人とは違った匂いがする。)
レッドは常人を遙かに上回る嗅覚の持ち主だ。
レッドの鼻は既に、洗濯物の向こうの人影が、このスラムには不釣り合いな人物である事を見抜いていた。
(……女?)
洗濯物の影から現れたのは、長いブロンドの髪をした若い女だった。
まるでアルビノのような、透き通るような白い肌をしたその女は、澄んだスカイブルーの瞳をしている。
白いワンピースを着ているせいか、レッドの目には天使のように写っていた。
「綺麗だ……。」
「なんだよ。お前、ひょっとして女に興味があるのか?」
意外そうな表情でブルが言った。
(特に興味があるわけじゃないけど、女好きのブルに言われると何かなぁ……。)
すると、ブルが女に声を掛ける。
「やぁ、お嬢さん。俺達人を探してるんだけど、ちょっといいかな?」
女は一瞬、面食らったような表情を見せるも、以外にも気さくな笑顔で話し出した。
「そう?わたしも人を探してるの。奇遇だね。」
女は、見た目は20歳前後だが、話し方には何処か幼さを感じさせる。
「へぇ、そうかい。どんな人だい?」
「わからない。多分、昨日まで一緒にいた人。」
ブルは固まった。
もしかして、この女は頭の中身が少し残念な事になってる系のお方なのでは?と考えてしまったのだ。
だが、女の表情は真面目そのもの。
一応、期待はせずにこちらの質問を投げかけてみる事にした。
「俺達は黒いスーツを着て、こんな帽子を被ったサイボーグのエセ紳士を探してるんだが、どこかで見なかったかい?」
頭上で両手を使ってシルクハットの形状を説明しながら聞く。
すると答えは以外にも……
「多分だけど、その人知ってるよ。」
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