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「本当か!?」
「うん。忘れたけど。」
爽やかな笑顔で言い切る女を見て、ブルは両肩をガクッと落とした。
「キミは……どこから来た?」
今度はレッドが聞く。
「わからない。昨日から何も思い出せないの。」
どうやら本当に頭の中身が残念な事になっていたようだ。
何処かに頭でもぶつけたのだろうか。
昨日までの記憶が無いらしい。
ブルは、この残念な女を、さて、どうしたものかと眺めている。
アンドロイドやサイボーグには通常、人間と区別する為、出荷時に左の首筋にバーコードが打たれる。
これをバーコードリーダーに通せば製造元や本来の目的が分かる仕組みだ。
だが、この残念な女にはバーコードが打たれていない。
果たして人間なのだろうか。
「じゃあ……何でこんなとこをうろついてるんだ?」
やれやれといった様子でブルが聞くと、
「わからない。ただ、どこか遠い所に行かなきゃいけない気がして……。」
この残念な女はおそらく、それが何処かも分からないのだろう。
「こりゃ相手にするだけ無駄だな。情報ありがとよ。行くぞレッド。」
(待てよ、置いて行くってのかよ?)
ブルは残念な女に背を向けると、片手をヒラヒラと振ってその場に後にする。
(オレたちも暇じゃないからな。仕方ないか。)
レッドも少し名残惜しそうにしながらもブルに続く。
「ちょっと待ってよー!」
残念な女が早足で追いかけてくる。
それに合わせてブルとレッドも早足になる。
「ねぇ、待ってってばー!」
残念な女が走り出した。
こうなると、さすがに少し可哀相だと思っていたレッドも、若干うっとおしく感じているようだ。
ブルとレッドも残念な女から逃げるようにして走り出した。
「ねぇ、何で逃げるのよ!こんな怖いとこに女の子を一人で置いていくつもり!?」
残念な女は最早、全力疾走で後を追ってくる。
既に半べそだ。
「今までずっと一人で怖かったんだから……あっ!!」
背後でドサッという音が聞こえた。
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