CHAPTER:0

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蛍光灯が点滅する人気の無い通路に、コツコツと足音を響かせながら歩く人影がある。 このコーンロウと呼ばれる髪型をした厳つい風貌の男は、ブル。 バグと呼ばれる、犯罪や叛逆を起こしたサイボーグやアンドロイドを狩る賞金稼ぎ、デバッガーだ。 ブルは、通路の突き当たりに位置する扉の前に辿り着くと、足を止めた。 ホルスターから拳銃を抜き取り、顔の横に構えると、半身になって、左手を扉に沿える。 一度呼吸を整えてから、勢い良く扉を開くと、その先の空間に飛び込んだ。 地面を転がってから片膝を着く体勢になり、素早く拳銃の標準を視界に貼り付けた状態で辺りを見渡す。 この、観客席を設けた巨大なドーム状の空間は、人間にとっての娯楽施設であり、格闘用アンドロイドが見世物としてロボットと戦う為の地下闘技場だ。 立ち上がって周囲を見渡すも、今回のターゲットであるバグの姿は見当たらない。 アテが外れたかと思い、拳銃を降ろした瞬間……後頭部に強い衝撃が走り、前方に大きくよろめいた。 「…不意打ちかよっ!」 銃口と共に素早く振り向くと、すかさず引き金を二回引く。 渇いた発砲音が響き渡ると、それに合わせて、ほんの一瞬だが明るく照らし出された視界に、小柄な人影が写し出される。 その人影は、まるで野生動物のような動きで、飛び退き、凄まじい跳躍力で、一回転ジャンプを披露しながらブルの頭上を飛び越えた。 その際にブルは、空中で逆様になった体勢の人影と目が合う。 影の主は、血のように真っ赤な瞳をしていた。 そして、白髪のショートヘアーに褐色の肌……肘から先がサイボーグ化した右腕。 間違いない、こいつが今回のターゲットだ。
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