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渇いた発砲音を立てて放たれた銃弾は、迫り来る相手の頬をかすめた。
更に続けて二発。
しかし、銃口から弾道を読まれているのか、左右への素早いステップを前に二発ともかすりさえしなかった。
瞬く間に距離を詰めた相手は、再び右腕を構えた。
「来いよ!」
壁に背を付けて腰を落としていたブルは、素早く立ち上がり、相手をギリギリまで引き付ける。
パイルバンカーの起動を知らせる爆発音と共に、左前方向に飛び出したブルは、右腕を突き出した相手に対して、事実上、背中を取った形になった。
破壊的な音を立てて、深々と突き刺さるパイルを中心に、壁一面に蜘蛛の巣状の亀裂が広がる。
相手の後頭部には、拳銃が突き付けられていた。
「ふぅ……やっと追い詰めたぜ。手間掛けさせやがって。」
相手は、壁から右腕を離すと、両手を上げて降参を示した。
パイルバンカーは小柄な肉体に対して、反動が大きいのだろうか……既に二度も放った右腕は、肩から先が震えている。
「……デバッガーってのは、バグじゃないアンドロイドまで狩るの?」
追い詰めた相手は、まだ幼い子供だった。
「三人も殺しゃ立派なバグだぜ。」
「オレは殺したくて殺したんじゃない!あいつらが……オレをバグとして、てめぇみたいな連中に引き渡そうとしたから……!だから……オレは……オレがイドに目覚めたからって……見世物のアンドロイドとして不要だからって処分しようとしやがったんだ!だから殺した!」
「俺達デバッガーはただの賞金稼ぎだ。賞金の掛けられたアンドロイドをバグとみなして処分する………それだけだ。」
「命あるオレらを……ただ単に、いらなくなったっていうだけの理由で殺すのかよ……。」
「残念だが…アンドロイドってのは、そう言うもんさ。」
「てめぇも同じアンドロイドだろ!」
「俺達は狩る側と狩られる側の関係だぜ?同じだと思うか?」
「…………くそ。」
小柄な相手は力無く地面に膝を着いた。
薄暗い地下闘技場に一発の銃声が木霊した。
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