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「うっはぁ…。
これ渡るのかよ?」
下は崖っぷちで、落ちたらまず助かりそうもない。
そんな崖に木製の吊り橋がかかっていた。
「うん、ここを渡る橋は今はこれしか無いの。」
「おいおい…じゃあこれが壊れたら出られないのかよ?」
「うん…そうなるね。
でも結構しっかりした橋だし、大丈夫だよ。」
橋を渡るとまた深い森。
「この森を抜ければすぐだから二人共頑張って!」
「うん…。」
「はぁ…これを抜けんのか…。」
「ねぇ、椿ちゃん。
鎌鼬村ってどんな所なの?」
「素敵な所よ!
小さな村だけど…村人は皆優しいし。」
「鎌鼬ってのは?」
「りゅーちゃんは聞いた事ない?
妖怪鎌鼬の話。」
「ひっ!
妖怪!?」
「鎌鼬はね、古くから伝わる妖怪なの。
一度怒らせてしまうと、体をズタズタにされて殺されちゃうんだって…。」
「うっ…。」
「だからこの村では鎌鼬を神と崇めてるの。
祭壇に鎌を供えて、今日みたいに決まった日にお参りするための祭りをするの。
」
「鎌鼬…か。」
「祭は沢山の出店もあるし楽しいよ!」
「うん楽しみ!」
「なんだ?
さっきまでのびびりは直ったのか?」
「もぉ…。
だって…。」
「無理も無いよ…。
鎌鼬様は妖怪だもん。
華夜ちゃん昔からそう言うの苦手だったよね。」
「うぅ…。」
「ほら、見えて来たよ、あそこが鎌鼬村…。」
「あれが…。」
目立つ物等無く、古風で地味な村。
いつも見慣れた街の風景とは全く違う。
「ほら、ここに祠があるんだよ。
入る時はここでお参りしてから入るのが決まりなの。」
椿が小さな建物を指差し、戸を開ける。
「ゲホッゲホッ…。
凄い埃だな…。」
「村の人以外がここに来る事…滅多に無いの。
たまに村人が果物を変えに来るぐらいでしかここに人が入る事無いから。」
「ならなんでこんな?」
「さぁ…。
私にもさっぱり…。」
奥には鎌や果物が供えられた石像がある。
「この石像が…?」
「そう、鎌鼬。
見た目は鼬何だけど、手が鎌になってるでしょ?」
「本当だ!
何か怖いね…。」
「ったく…相変わらずビビりだなぁ。」
「うっ…うるさいなぁ!」
「ふふ、二人共相変わらずだね。」
「うぅ…。」
「本物の鎌だな…。」
「勿論。
じゃないと鎌鼬様に殺されちゃうもん。」
「鎌鼬…か。」
「さぁ、祈りを捧げて。
鎌鼬様に生かして貰う為に。」
「あぁ…。」
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