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だって、七嬉は。
僕のことを『お兄ちゃん』と呼ぶ女の子、淀ヶ原七嬉は第三学年として高校に通う僕よりも“七つ年下”なのだから。
十八引く七で十一歳、小学校五年生にあたる歳だ。いくら身体の成長が著しい思春期の女性だからといっても、僕より年上のように見える彼女が七嬉であるはずがない。
「あの、どうやら気分が優れないようですが……大丈夫ですか?」
僕はそう言って彼女に近づいてゆく。そして俯き加減の彼女に手を差しのべた、その時。
「……お兄ちゃんっ!」
彼女は突然、僕の身体に抱きついてきた。
「な、ちょっ……えぇ!?」
驚いた僕は情けない声をあげてしまう。一体、何がどうなっているんだ?
「気分が優れないなんて、そんな事ある訳ないじゃないですか。貴方がわたしのことを分かってくれたのに……!」
目に大粒の涙を浮かべて、それにもかかわらず最上級の笑顔で、彼女はそう言った。僕を抱きしめる腕にはより一層力が込められる。
分かってくれた? ということは、まさか本当に……
「……会いたかったよ、ナナちゃん」
どうしてそんな姿なんだ? なんでそんな格好で、道の案内なんかを?
訊きたい事は山のようにあったけれど、とりあえず僕は泣きながら胸に顔を埋めてくる彼女の頭を撫でてやる。三年前そうしていたように。
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