第一章:再会

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 僕は声の聞こえた方へと頭を向け、声の主の姿を捉える。  そこに立っていたのは、二十代前半くらいに見える一人の若い女性だった。ベージュのブラウスに丈の長いスカート、そして白のエプロン──所謂メイド服のような装いの彼女が、どうやら僕に声をかけた当人のようだ。  彼女はぬかるんだ土の上であるにも関わらず、足音を全く立てずに僕の方へと歩み寄ってくる。 「屋敷はこの道をもう十数分ほど進んだ先にございます。急用でお越しいただけないとの連絡を受けておりますお一方以外の皆様は既にお見えになっていますよ」 「え、あ、はい……」  僕は思わずそんな曖昧な返事をしてしまう。それもそうだ、突然見知らぬ女性から声をかけられて案内を受けようとしているのだから。  この人は一体何者なのか──尋ねようとは思ったが、相手が会話を切り出してしまった今、むやみにその流れを遮るのも憚られた。もう少し待って名前を聞く機会を伺おう。  そう思って、僕は会話に乗ることにする。 「親切にどうも。しかし三年も経ったというのに、ここはやはり変わりませんね。もうちょっと賑やかな所になっているのを期待していたんですけど」  冗談めかして言った僕の言葉を受け、彼女は「そうですね、私も残念です」と言ってくすりと笑った。  最初に声を掛けてきた時の慇懃な態度からもっと堅い性格なのかと思っていたが、どうやらそんなことはないらしい。柔らかい笑顔がよく似合う、柔和そうな人だ。
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