2人が本棚に入れています
本棚に追加
〝桜井優歌〟
身体が固まる。
桜井どころか、瑠奈という名前も、名簿の中には見当たらない。
瑠奈は、俺に嘘をついたのか?
でもどうして?
何故嘘の名前を…瑠奈と呼んでくれ、なんて言ったんだ?
嘘をつく必要はあったのか?
ぐるぐるといろんな考えが頭を埋める。
少し考えれば、すぐわかる嘘。
なぜこんな嘘をついたんだろう。
考えても、やっぱりわからなかった。
(俺はからかわれたのか?)
そんな考えも出てきた。
けれどその瞬間、瑠奈と呼んだときのあの嬉しそうな笑顔がよみがえる。
嘘の名前を名前を呼ばれることが、そんなに嬉しかったのか?
…いや、違う。
嘘の名前とか俺をからかうだとかそういうのは全くなしに、名前を呼んでもらって、純粋に喜んでいる表情だった。
そんな真っ直ぐな笑顔だったからこそ、俺の気持ちだって明るくなったんだから。
俺はこれから、桜井優歌のことを瑠奈と呼んで良いのだろうか。
なぜ桜井優歌は、瑠奈と名乗ったのだろうか。
謎は深まるばかりだった。
最初のコメントを投稿しよう!