深まる謎

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〝桜井優歌〟 身体が固まる。 桜井どころか、瑠奈という名前も、名簿の中には見当たらない。 瑠奈は、俺に嘘をついたのか? でもどうして? 何故嘘の名前を…瑠奈と呼んでくれ、なんて言ったんだ? 嘘をつく必要はあったのか? ぐるぐるといろんな考えが頭を埋める。 少し考えれば、すぐわかる嘘。 なぜこんな嘘をついたんだろう。 考えても、やっぱりわからなかった。 (俺はからかわれたのか?) そんな考えも出てきた。 けれどその瞬間、瑠奈と呼んだときのあの嬉しそうな笑顔がよみがえる。 嘘の名前を名前を呼ばれることが、そんなに嬉しかったのか? …いや、違う。 嘘の名前とか俺をからかうだとかそういうのは全くなしに、名前を呼んでもらって、純粋に喜んでいる表情だった。 そんな真っ直ぐな笑顔だったからこそ、俺の気持ちだって明るくなったんだから。 俺はこれから、桜井優歌のことを瑠奈と呼んで良いのだろうか。 なぜ桜井優歌は、瑠奈と名乗ったのだろうか。 謎は深まるばかりだった。
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