ふとしたきっかけ

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「ねぇ、君さ、初めて来てくれたよね?名前はなんていうの?」 目を輝かせて、桜井が訊ねてくる。 「…あ、えっと、伊藤陸…だけど…」 「じゃありっくんて呼ぶね!」 にっこりと笑う桜井。 とても人懐こく、可愛らしい笑顔だった。 思わず見惚れていたけど、すぐ我に返り、目的を思い出す。 用が済んだなら帰らないと、長居はあまりよくない気がした。 「…あ、それじゃあプリント渡したし、俺帰るよ。桜井、みんな待ってるから…早く学校来いよ?」 そういうと、桜井は一瞬目を見開き、それから笑って言った。 「そうだね、うん!」 さっきと同じ笑顔のはずなのに、なぜかその笑顔は、酷く痛々しかった。
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