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「ただいま…」
俺は家に帰って来た。
涙はすでに止まっていた。
「お帰りなさい、千紘」
母さんが笑顔で俺を出迎える。
だから俺もそれに合わせて笑顔を作る。
あまり心配はかけたくないから。
俺は母さんの横を通り二階へと上がろうとする。
そこへ
「部屋に行く前にちゃんと手を洗いなさいね」
「はーい」
二階へと上がろうとしていた体を方向転換させ俺は洗面所へと向かう。
手をしっかりタオルで水気を拭き取る。
ふと鏡に写った俺の顔が見えた。
目は少し赤く腫れ上がっていた。
(あの約束を忘れれば少しは楽になれるのかな?)
(そもそも男同士だしやっぱりおかしいのか?)
俺が零次の事を好きなのに変わりはない。
でも零次は…
零次は回りの人と同じようにおかしいって笑うのかな…気持ち悪いって思うのかな…。
そんなことを考えていたら胸が苦しかった。
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