眠る午後

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いっそ、誰かと出かける約束でもしていればよかったかもしれない。そう、決まりきった誰か、と。 あらかじめ声をかけていれば、彼のことだからきっと乗ってきてくれていた。仕事とはいえ、いつも一緒にいるものだから、つい失念していた。予定にしても、自分が思いつかなくとも、きっと彼のことだから何かしら提案してくれただろう。彼は今頃どうしているだろうか。彼にしても、たまの休日なのだから既に誰かと出かけているかもしれない。………… 惜しいことをしたかな、とようやく二葉は過ぎてゆく時間を歯痒く思う。眠りすぎて茫洋とした脳裡で。放っておけばまた眠りに捕らわれる。いい加減、起きた方がいいかもしれない。洗濯くらいなら、今からでも夜までに乾くんじゃないだろうか。何か一つでも行動しておきたい気がしてくる。 ベッドに伸びたまま、二葉は開け放ったカーテンの向こうの空を見上げた。真夏の空はひたすらに青くて、そこに君臨する太陽はそれ自体が目眩の塊のような輝きを放っている。
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